中小企業の新卒学生の採用体制は大手とは異なります。中小企業就活の落とし穴(0)でも書いたとおり、専任の新卒担当者が居ないどころか、選任の人事担当者も居ないぐらいの会社も珍しくありません。採用したい人数が一社当たりで数人程度と言うこともあるので、採用活動は非常に短期間で決着することが多くなります。また、これも、中小企業就活の落とし穴(0)に書いたとおり、中小企業は雇い過ぎを恐れて内定を出すことに非常に慎重です。

一年のうちの早い段階で内定を出すと、いつ内定辞退を連絡してくるか分からない学生との関係をたくさん並行して長期間状況を見なくてはならなくなります。これも、先述のような専門の担当者が居ないような状況では非常に困難です。ですので、そのような事情を何年かの採用経験から分かっている中小企業では、どちらかと言うと、年の後半、夏休み以降、秋が近くなってきた段階で本格的な採用活動を開始することが多いようです。

求人を出す媒体の傾向も大手企業とは異なります。新卒向けの就活サイトに求人広告を出すと、簡単に100万円単位のコストがかかります。それで500人の採用を大手企業のように行なえば、一人当たり2千円の広告コストですが、中小企業で、たった2人しか採用しないのであれば、一人当たり50万円ものコストがかかっていることになってしまいます。これは非効率ですし、大手のサイトに広告を出しても、大手企業に比べてどうしても見劣りしてしまって、アクセス数を稼げないのが実態です。

このようなことから、中小企業はハローワークなどの公的機関への告知、大学の就職課に直接連絡した上で求人票の掲示、さらに中小企業向けの合説への出展などの手段を重視します。また、コストの抑制を目的として、既に採用実績のある大学に接触して、学内説明会に出展したり、直接教授などに連絡して学生を推薦してもらったりすることもよくあります。

中小企業では、「若手人材」と言う括りで最も採用活動が行ないやすい人材群として新卒学生を捉えていることも多いので、新卒学生か否かにこだわらず、縁故(会社に接触のある人々や従業員のコネ)による採用なども並行して行なっています。学生アルバイトの社員などに、「良かったら正社員にならないか」と持ちかけたりするのも、縁故採用の一環です。このようにして、自社に適応性の高い(逆に言うと、よく分からない人を採用してしまうリスクを抑えた)採用活動を展開しようとするのです。