本当に無理です。中小企業への就活の場合に限ればということですが。中小企業の会社研究がなぜ無理かというと、中小企業には自社の経営状態にかかわる情報を外に向けて発信する根本的ニーズがないからです。

この点、大手企業は違います。大手企業は多くの場合、公開企業です。公開企業はその企業の持ち分である株を一般の人が購入して持つことができる企業です。つまり、その企業の持ち主が、世間一般のどこにいるか分からない状態です。企業の持ち主である株主に対して、企業は自社の経営状態を知らせる義務があります。これが、通常、IR情報と呼ばれる情報のことで、企業の経営状態を詳しく年度ごとに外部に対して発信しているものです。ですので、大手企業の会社研究は、その会社のIR情報をよく読みこめば、その企業の持ち主と同じレベルまで可能であることになります。

ところが、その多くが公開企業ではない中小企業は、株主が大抵、経営者自身が兼ねていたりするので、外部に対して情報発信をする基本的ニーズが存在しないことになります。さらに、比較的古いB2Bの業界の中で、狭い市場を相手にしている中小企業などは、固定した取引先と長年の信頼関係の中で経営が成り立っていますので、特段、自社のことを関係者以外に知らしめる必要がないことも多いのです。そのような企業は自社サイトさえ持っていないこともあります。自社サイトがあっても、頻繁に更新していないこともよくあります。

小売業や飲食店など、店舗を持っている企業ですと、店舗に行って見てみるなどの方法もありますが、店舗でお客の立場で感じる雰囲気と働いて感じる雰囲気は全く異なることはよくあります。

商工リサーチ社や帝国データバンク社などの情報も一応参考にはなります。しかし、これも、調査自体に協力的ではない中小企業も多数ありますし、データそのものがアバウトなものであったりもします。社長の人物像などに関して多少手がかりが入手できることもありますが、基本的には目安になる程度と考えるべきでしょう。

大手企業の記事が新聞やビジネス誌によく載っているのは、先述のIR情報と同じように、プレス・リリースと呼ばれる自社情報の提供をメディアに対して行なっているからです。中小企業の場合は、そのようなことをしている企業が少ないので、当然、新聞や雑誌の記事でも特定の中小企業の情報を得ることは困難です。

このように中小企業の会社研究は非常に困難で、どの方法も試す価値は在るものの、どの企業にも適用できそうなオールマイティな会社研究方法は、少なくともその企業に接触しない状態では存在しないといった方が良いと思います。その企業の会議室などで行なわれる面接や、OB訪問、アルバイト体験(多くの中小企業はインターンシップの制度を持っていません。)などの直接の接触を経なければ、各企業の実態はほとんど分からないのです。