大手企業対象の典型的な就活では、複数(一般に4〜5分野程度)の業界を研究対象として、大まかに、その業界の企業に応募するたびに、ざっと業界の動向を仕入れておくという感じに業界研究は捉えられています。
この際の業界研究は、就活中の学生向けに書かれた大雑把に業界を括った業界研究本によることが多いものと思います。そして、各々の業界に述べられている大手企業は多くても10社ないはずです。大手の有名企業では、放っておいても学生の応募が多いので、学校や学部の偏差値や、過去の採用実績から、面接段階に至る前に学生を大幅に絞り込んでしまいます。その上で、面接の際に、志望動機の一部として、業界にどの程度関心を抱いているかを見るために、業界の知識を簡単に尋ねることがあるという程度です。
大手企業と言うのは、当然ですが組織が大きいので、経営のスタイルや方式、経営技術の面で或る程度似ている仕組みになっていきます。大きな組織を効率よく動かそうとすると、特定のやり方に結果的に皆なって行ってしまうということです。ですので、大手企業を就活の対象にする限り、業界の動向を最低限大まかに知っていれば、そこで大手企業がどのように事業を展開しようとするかは、かなり理解しやすいものです。
経営コンサルティングの分野の慣行や、銀行などの金融機関が用いている業界分類などによると、業界と言うのは実は非常に細かく分かれています。かなりアバウトに分類したものでも、1000の単位程度に分類可能です。その各々には特徴があって、現在の業界の動向に至った歴史的な背景があります。
それらの夥しい数の業界には多くの場合、一つ、または複数の業界団体があります。そして、各々業界には、その業界の状況を熟知している出版社による業界紙・業界誌が存在して、その業界のことをきめ細かく報じています。中小企業では、一見、何が強みで大きく収益を上げているのかがよく分からない企業が多数存在します。それらの企業の強みは業界でその企業と競合している企業や、その業界を熟知している人間にしか分からないような、些細な事柄であったりします。
極端な事例で言うと、或る小売店チェーンがダントツの売上を誇っているのは、レジでお客様にお勧めの品を一言必ずお伝えすることが全店員に徹底されていることが最大の要因であったりします。勿論、競合他社もそれを表面上まねることができます。しかし、全店員が必ず行なうように徹底できる教育のシステムの有無などがその背景にあるなどして、簡単な模倣ができないようになっていたりするのです。
そのように考えると、中小企業の会社研究と業界研究はかなり相関があることがわかります。それをきちんと知ろうとすると、業界団体を訪問したり、業界紙・業界誌を短期間でも良いので定期的に読んだりするぐらいの業界研究が必要であることが分かります。