中小企業就活の落とし穴(1)で書いたとおり、中小企業は学生に対して、一般に言われるようなジアタマのよさや課題解決能力をあまり求めていません。
大手企業に比べて中小企業は経営環境が変化しやすく、それに応じて柔軟な対応が求められます。先月までやっていた当り前の営業方法を、大手競合企業の進出に備えて、今月からがらりと変えてしまおうなどということも、頻繁に起こりえます。無闇やたらの朝令暮改は望ましくはありませんが、状況に応じた臨機応変な対応は、「経営の機動性」が根本的な強みである中小企業にとっては必須です。そのような中で、真剣に物事に取り組もうとする姿勢や、新たな方法やノウハウを貪欲に学ぼうとすることは非常に大切です。
中小企業就活の落とし穴(0)で書いたとおり、中小企業では組織が分化していないので、その企業の事業全体の多くの部分に関わる働き方や視点が、中小企業では求められます。大手企業の場合は、営業担当の社員が「それは物流の担当の仕事です」と同僚に言っても何の不思議もありませんが、中小企業では、場合によっては、「物流の連中が手が回っていないのだから、お客さんに迷惑をかけないために自分でやったらどうだ」と簡単に言われる状況です。その意味では、部門ごとに仕事が分かれた大手企業の場合こそ、就“職”で、会社全体の仕事に関わる中小企業では、就“社”に近いことが分かります。「自責」と言う言葉がありますが、どのような仕事でも、自分の仕事としてそれを引き受けて取り組み、言い訳や言い逃れをしないという姿勢も、中小企業では非常に重要です。
セクトに分かれていないということは、誰もがお客様に接したり、取引先の役職の高い人からの電話に出てしまう可能性が日常的に存在するということです。敬語をきちんと使えるとか、ビジネスマナーの基礎がきちんとできていることなども重要な評価ポイントになります。
また、これも、中小企業就活の落とし穴(0)で触れましたが、中小企業は部署や拠点が少なく、ほとんど人事異動が起きません。その企業に勤める限り、そこのメンバーと一緒に働くことが求められます。ですので、チームワークや協調性も大手企業以上に重視されます。
「多少、尖った人材じゃないと、今後のうちの会社を引っ張っていけない」などと言う経営者の発言を聞くことがありますが、その尖っていることも企業の事業に対する強い熱意に基づいたものであれば評価されますが、単に協調性が少ないと言う意味での「尖っている」ではすぐさま評価を落としてしまうものと思います。
大手企業向けの一般的な就活のマニュアルなどで言われている、ディスカッションなどを前提としたコミュニケーション能力、プレゼンなどの表現力、そして状況ごとに発生する課題に対する解決能力などは、あまり意味を成していないことがお分かりいただけると思います。