このサイトの説明で「業界研究」と呼んでいる作業は、一般の就活マニュアルに書かれている「業界研究」とは全く異なります。中小企業就活の落とし穴(3)にも書いたように、実際にビジネスで使われている業界分類に従った業界の括りと、それに応じた、業界の構造を知る作業のことを指しています。
業界を知る最も間違いない方法は業界紙(新聞タイプの業界メディア)・業界誌(雑誌タイプの業界メディア)をきちんと読みこなして理解することです。月刊や隔週刊などのものが多いので、半年ぐらいの講読が本来理想的です。せめて三ヶ月分ぐらいは読んだ方がよいでしょう。その中の主だった記事を毎号選び、意味が分からない言葉がないようにすることが大切です。
例えば毎号の特集記事を読みこなすことにしても、結果的に用語を理解するために、他の記事を読んだほうが良いこともあるでしょう。また、場合によっては、就活用の大雑把な業界研究本も合わせ読んだほうが、その業界の専門用語などが分かることがあるかもしれません。一番間違いない方法は、出版社の編集部に質問をまとめて送ってみることです。少なくとも定期購読などの形で、先方もこちらがお客さんだと分かっていれば、質問に誠実に対応してくれることと思います。そのような活動を通じて、業界の現場の人間だけが知る色々な視点や知識、ノウハウなどを知ることができるのです。
業界関係者が主体となって開かれる展示会があることもあります。また、その業界で用いられるスキルに関して、資格制度があることもあります。そのような情報を把握するのもとても重要です。
業界紙・業界誌を読んで理解できるようになることが、本格的な業界研究の王道であることがお分かりいただけたと思いますが、その道程で一つ大きな問題があります。それは、業界紙・業界誌を見つけることです。業界紙・業界誌は、業界内部だけでビジネスが成立しているので、自社サイトなどを立ち上げる必要がないことが多く、検索しても見つからないことが、よくあるのです。
この業界紙・業界誌のタイトルや出版社を知る方法の最も確実な方法が、業界団体に接触することです。業界団体には業界に関するありとあらゆる情報が集積されています。その業界に関わる業界紙・業界誌の過去数年分のバックナンバーを閲覧させてくれる図書室のようなスペースがある団体まであります。可能な限り訪問し、難しければ電話やファクスで丁重にお願いし、業界紙・業界誌のタイトルや出版社の連絡先を教えてもらえばよいでしょう。
業界団体の多くは自団体のウェブサイトを持っていますから、キーワードさえうまく設定できれば検索は比較的容易です。また、きんざい社が発行している『業種別審査事典』などでは、1000以上の業界の詳しい状況と合わせて業界団体の名称が紹介されています。まずは、業界団体を調べられる状態を用意して、色々とその業界団体が管轄する業界の仕事を想像してみましょう。逆に自分の知り合いや親戚などのお仕事の業界団体を捜してみるのも面白いでしょう。そして関心が持てる業界を数個に絞込み、可能な限り業界団体を訪問したりするなどすれば、その業界により関心が持てることでしょう。その上で、業界紙・業界誌を教えてもらい、講読を始めればよいのです。三ヶ月じっくり読み込むだけなら、春からでもできます。年明けからの就活の初動で、全くいい結果が得られなかった学生でも、夏からあとには、中小企業が「欲しくて仕方がない」と思う人材に変われるのです。