オーナー経営者が求めがちな 「オーダーゲッター」

中途採用の営業担当者を募集中のモデル的中小零細企業のオーナー経営者に尋ねてみると、大抵、「物怖じせずに、新たな人間関係を築ける」だの、「お客様の利便を考え、新たな商品でも見つけてきて、提案ができる」などの期待について説明されます。その期待される機能から、欲しいのは一般的に「オーダーゲッター」として分類される営業担当者と言うことになります。

しかし、そのような人物の採用と活用には大きな障害が待ち受けています。一般には、以下のような障害と考えられます。

●求人紙・誌の募集なので、人材紹介などに比べ良質な人材が集まりにくい。
求人紙・誌の募集では絶対に良質な人材が集まらないと言うことでは決してありませんが、一般的にはこのようなことはよく言われます。
中小零細企業による中途採用の場合ですと…
(1) 求人広告の内容が代理店任せであったりして不正確
(2) 面接段階での説明などにも不備が多く、きちんと選考ができない
(3) コストなどの制約から、告知を広く行なえず、絶対数も集まりにくい
などの理由によるものと思われます。

●魅力ある良質な人材は、自社の給与テーブルに当てはまりにくい。
モデル的中小零細企業に魅力的に映る、他社でのオーダーゲッター経験者は、一般に給与が高く、既存の自社の給与テーブルには当てはめることができないことがよくあります。この場合、「一年ほど頑張ってくれれば、成果が出て、それなりの待遇にあげることができるから…」などの常套句で採用をしようとしがちです。しかし、前職に比べ、新しい仕事に何らかの強烈な魅力がなければ、このような忍耐を自分に強いる良質な人材は居ません。良質な人材は自分の価値もそれなりに正確に理解していますので、他の求人案件にすぐに向かうことでしょう。

●オーダーゲッターの機能は個人の能力だけで果たせるものではないことが多い。
前職で高い実績を上げたオーダーゲッターでも、採用してみると全く精細を欠くことがあります。これは、営業の成績が必ずしも個人的なファクターによって決定されているからではないからです。例えば、前職では…
(1) 充実した顧客データベースが存在した、
(2) 取扱商品に特化した何らかの営業プロセスの教育をきちんと受けていた、
(3) 何らかのチーム営業を行なうことになっていた、
(4) 存在した人脈などを移転することができない
などの色々な要因が考えられますが、上述のような要因を無視して自分の実績をそのまま自分の能力によるものと勘違いしている人材はかなり存在します。いずれにせよ、本人に高い動機があっても尚、新たな環境での活動に困難が伴うのは当然です。

●良質な人材が採用できても、他の営業担当者の理解が得られず、組織内で疎外されてしまいやすい
既存の営業担当者は「営業」と言う分類上は、新たに採用されたオーダーゲッターと一緒です。しかし、彼らは事実上、オーダーテイカーであり、果たす機能は全く別ものです。新参者が成果を出せなければ、良くても自分たちの営業プロセスへの吸収を図るでしょうし、悪く転ぶと疎外をすることになるでしょう。仮に成果が出ても、オーダーテイカーである他の営業担当者の「仕事」とは認識されないでしょうし、ともすると、それまで唯一のオーダーゲッターだった社長の嫉みなどを受けることもあります。
どちらにせよ、このようなことが組織内で起きると、折角採用したオーダーゲッターを定着させることは困難でしょう。

中小零細組織における 「オーダーゲッター」 活用の重いコスト負担

オーダーゲッターは事実上、新規取引を担当する訳ですが、オーダーゲッターの外部調達による増員を検討するモデル的中小零細企業には、典型的な理由があります。それは、売上や利益が横ばいになり、手詰まり感が感じられるか、事態はもっと悪化して、明らかに売上や利益が減少し始めたということです。

このような場合、モデル的中小零細企業は…
●既存事業とぎりぎりシナジーがある程度の新規商材の取扱いの開始や、
●既存顧客は飽和したとして、未知・未経験な分野のリストなどに基づく新たな顧客の開拓など
を検討し始めます。当然ですが、これらの実行にはオーダーゲッターの機能が必要です。

モデル的中小零細企業では、有能なオーダーゲッターを採用し、利活用することが困難であることを、冒頭で述べました。わざわざ、困難なオーダーゲッターの外部調達に挑んでも、時間や手間の負担は大きく、すぐに目先の効果が上がる可能性が低いことは明らかです。数人のオーダーゲッターを入れ替わりで採用しては退職させてしまうようなことを繰り返すだけで、組織内の疲弊感は増し、その試行錯誤に数ヶ月から半年を費やすだけで、売上も利益も加速して減少することになっていくでしょう。

仮に有能なオーダーゲッター1~2名の採用と(最低でも半年以上程度の)長期間の定着に成功したとしても、その効果が出るには時間と手間が、つまり、コストがかかります。CSを説く書籍などには、既存顧客を大切にすべきことが述べられていますが、その根拠として、「新規顧客開拓のコストは既存顧客との取引のコストの5倍から10倍かかる」などと述べられています。これらの数値がどのように算出されているのか正確にはわかりません。しかし、既に自社のことも営業担当者のことも知っている顧客に、既存商品と同一ラインの新商品を販売して一定額の売上を上げるのに対して、全く新規の顧客を確保し、自社の紹介から始まり商品の紹介までして、何件かに一件の確率で成功するまでのコストが、比較にならないほどに大きいと言うのは、直感的に分かります。

そのように考え、モデル的中小零細企業のケースでは、既存のオーダーテイカー機能の強化を最初に図ることによる売上・利益向上が、短期的に取り組むべきことではないかと弊社では考えています。

無論、既存顧客の間の需要の飽和や、既存商品の陳腐化が明らかであり、それらへの対策が必要であるケースでは、オーダーテイカー機能の単純な強化では対応できません。何らかのオーダーゲッター機能の調達が必要となりますが、一方でオーダーゲッターの機能を、中途採用によって丸々外部調達することには困難が伴い易いので、多くのケースでは、オーダーテイカーの機能を迅速に強化し、部分的にオーダーゲッターの機能を盛り込む形の方が早道に見えます。

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