インターネット黎明期から中小零細企業の「モトを取るウェブ活用」を企画

弊社代表の市川は、2001年から2002年までの期間と2005年から2008年までの期間、二社のウェブ系SPハウスの役員を務めてきました。渋谷にはまだビットバレーの残影があった頃、それら二社のクライアント企業の多くは中小零細企業で、当時は普通に「ホームページ」と呼ばれていたウェブページの立上げの企画から、その後のページ内容の更新までほとんど全部を、これら二社に丸投げしている状態でした。

これらのクライアント企業にとって、「ホームページ」は企業ならやっていなくては恥ずかしい流行の販促ツールではあったものの、高価なパンフレットぐらいの位置づけでしかなく、高いコストをかけて作っても、細かなメンテナンスをすることもなければ、アクセスの状態を把握することもありませんでした。

その後、徐々に検索エンジンの存在感が増し、SEOの概念が出回ると、“イケている企業”は「検索結果上位表示を達成するのが当たり前」という常識ができ上り、猫も杓子もSEOという時代に入りました。「相互リンク獲得」や「ページ・ディスクリプション改善」、「ページ内のキーワード埋め込み」など各種の手法が高値で売られるようになりましたが、上位表示されても問い合わせや受注などの形のコンバージョンにつながらないウェブページが続出し、「ホームページはモトが取れない」と言った所謂“SEO疲れ”が広がり始めたのです。

実際、その後、主要検索エンジンは個別のユーザーを識別しつつ、カスタマイズした検索結果表示を行なうように変化していますから、検索アルゴリズムを推測して検索結果のトップ10件に出現するためのテクニックそのものがほぼ無意味なものになってしまっています。

役員として二社で事業企画や商品企画に携わっていた市川は、サービス・メニューに「モトが取れるサイト運用」を掲げ、コストが嵩むばかりのアクセス数増加対策やSEO対策に代わって、自社内でアクセス解析を行ない、対応策を自社判断できる体制づくりをクライアント企業に提案することとしました。基礎的知識だけでも基本的なアクセス解析はできるため、その実践の場を「ウェブ運用会議」などとして中小零細企業組織の中に定着させることは、それほど難しくはありませんでした。

その結果、クライアント企業が納得ずくで、自分たちのウェブ戦略実現のためのページ更改、ページ構成変更を市川が役員を務める会社に常時依頼してくる状況となったのです。この際に打ち出された「モトを取るウェブ運用」の考え方をまとめると以下のようになります。

●ウェブ運用方針が必須
●自社内のアクセス解析が必須
●自社内のプロジェクト体制が必須
●外部からのアクセス流入量増加策よりも、内部のトラフィック改善策を優先する

というものです。これらは、現在の多くの中小零細企業でも満たされていない事柄で…

▲目的がはっきりしないまま、流行りにのって作っただけのウェブサイト
▲IT系が詳しい担当者に任せっぱなしで、趣味のデザイン全開のウェブサイト
▲IT系が詳しい担当者が退職してから、全く更新できないままのウェブサイト
▲バナー広告内容とちぐはぐな内容のランディングページがあるウェブサイト
▲これまた流行りで始めたメルマガと全く連動することのないウェブサイト
▲これまた流行りで始めたSNSと全く連動することのないウェブサイト

などが、非常に多くみられる理由となっています。

その後、時が経ち、ウェブページ作りは、CMSの普及によって、非常に手軽に行なえるようになりました。今となっては、ウェブページそのものを作る技術、アクセス解析をする技術の二つは、社員のコモディティ・スキルと言えるぐらいになりつつあります。

つまり、先述の4条件にもう一つ加わって、以下の5条件が中小零細企業が「モトを取るウェブ運用」を考える上で大事であることになりました。

●ウェブ運用方針が必須
●自社内のアクセス解析が必須
●自社内のプロジェクト体制が必須
●外部からのアクセス流入量増加策よりも、内部のトラフィック改善策を優先する
●自社内で基本的なページ更改も実施する

「モトを取るウェブ活用」から「外部とのコミュニケーションの核となるウェブ活用」へ

CMSの普及はウェブ活用の内製化を推進する結果となり、ウェブ活用のコストを大きく引き下げると共に、頻繁な更新を可能としました。頻繁な更新はコンテンツを気軽に増量することにもつながり、ウェブは「ネット上の自社情報アーカイブ」へと変貌しました。

通信速度も上がり、ペーパーレス化も進む中で、紙でできている企業パンフや製品カタログ、製品の取説までウェブに挙げるのが常識になりました。紙やCD、DVDなど物理的なメディアを保管する必要もないので、膨大な量の商品の詳細情報、さらに各種音声や動画の資料まで、すべて格納することができるようになりました。

この自社情報アーカイブとしての特性に、外部の取引先や見込み客、その他のステイクホルダーに対してのコンタクト場所としての機能も付け加わりました。

これら全部を総合して、紙のDMを撒こうと、CDに焼いた製品カタログを手配りしようと、メルマガを配信しようと、ブログやSNSで発信しようと、QRコードや関連リンクが「詳しくはこちら」と指し示す先は、すべて自社ウェブという状態が当たり前になったのです。

「無料の宣伝手法」とばかりにSNSにすぐに飛びついて、コンセプトもイメージもなくただイミフな内容を発信し続けたり、それさえも継続できず、打ち捨てられたアカウントをそのまま放置したり…と言った中小零細企業も山ほど存在しますが、そのような流行りモノに飛びつく前に、まずは確実に「外部とのコミュニケーションの核となるウェブ活用」が必須であろうと弊社では考えています。

言い換えるなら、外部への働き掛けが前提となる営業や販売などのマーケティング活動(※)を進める上で、コンセプトや方針が決まるごとに、まずはウェブで何をするかが議論されなければならなくなったということです。

現実に、弊社がクライアント企業で行なう各種プロジェクトや勉強会などでも…

●営業担当者による営業活動改善プロジェクトでは…
商品解説リーフレットをすべてウェブ化し、タブレットで提示できるようにした。また、外部に向けてのメールの署名には新商品紹介ページのリンクを常に挿入するようにした。

●展示会運営のプロジェクトでは…
会期中、展示会の様子を毎日新着情報としてウェブにアップすると同時に、展示会会場で配布するチラシにはQRコードを入れて、ウェブで関連情報をすぐにみられるようにした。

●店舗のVMD改善の勉強会では…
POPにQRコードを入れ、商品の詳細情報がウェブ上で各々見られるようにした。

●店舗スタッフによるインスタ投稿の勉強会では…
ウェブへの流入への貢献度からインスタのタグの人気度合いの評価を行なう仕組みとした。

など、常にウェブ活用が活動の一部として浮上しています。また、その段階で、社内の組織的なウェブ活用スキルが低いと、本来得られるであろう成果のほんの一部しか実現できないこともまた非常によくあります。

※外部への働きかけが中小零細企業で生じるもう一つの主要な場面に「人材採用」がありますが、外部採用系ポータルサイトとの連携や求職者への情報発信の在り方は、構造上、マーケティングのウェブ活用と変わることがありません。

ウェブ活用によるマーケティング活動のコスト削減と生産性改善の実現

先述の…

●ウェブ運用方針が必須
●自社内のアクセス解析が必須
●自社内のプロジェクト体制が必須
●外部からのアクセス流入量増加策よりも、内部のトラフィック改善策を優先する
●自社内で基本的なページ更改も実施する

の体制が整っているクライアント企業においては、各種PPC型広告を用いるなどしてアクセス増加を目指したり、特定ターゲット群に対するプッシュ型のアプローチについてウェブをレスポンスの受け皿として活用したりするなどの応用を行ないます。これにより、従来型の紙資料などを主力にした人力による営業・販売・宣伝活動に比して大きくコスト削減と効果増が望めます。

さらに、(個人情報管理の法制化により、今後の有用性が危ぶまれますが)中小零細企業にも手が届く価格になってきたMA(Marketing Automation)技術によって、大きくマーケティング活動を(コストを掛けず)質・量の両面から伸長させることもできます。

また、B2Cの企業においては、ICカードやスマホ・アプリと連動したウェブ活用などで中小零細企業でもかなり自動化した高度なCRM的なストラクチャーを実現することも可能になってきました。

マーケティングは結局のところ、お客のニーズをつかむことで成立するので、ヒトの知見やヒトの接遇が重要であり続ける部分が残ります。何でもかんでもウェブを中心に自動化すれば、中小零細企業にとって大手企業との差別化がより困難になる側面も否めません。しかしながら、ICT技術が実現するマーケティングの選択肢が中小零細企業にも十分手に入れられる状況になりつつある今、より効果的かつ効率的なマーケティング体制の確立は、少なくとも十分に検討されるべきです。

その検討と企画立案、実施。そしてそれ以前に、そのようなICT技術の活用が可能な組織体力の向上において、弊社は中小零細企業を支援します。