3ページに渡って、典型的中小零細企業の営業組織の機能について考えてきましたが、最後に、『典型的中小零細企業の営業組織の想定』のページで紹介したような、営業組織に対して、半年から一年程度の時間をかけて改善を企画するケースを想定し、その段階的な改善の骨子を以下に紹介してみます。
※当然ですが、実際の企画はケースバイケースで策定しますので、必ず以下に紹介するようになるわけではありません。

STEP1 顧客モデルの想定と「オーダーテイカー」 業務プロセスのミクロ的改善

まずは、営業担当者の方々に集まって戴き、情報交換会的な場を定例的に設けて戴きます。大体、隔週に一度、一回、一時間半程度が望ましいかもしれません。そこでは、主に二つのテーマについて、営業担当者全員で話し合い、大まかな共通認識を出して戴きます。

テーマは…

★顧客のモデル化とその各々のモデルに有効な営業アプローチの共有化:
オーダーテイカーは既存顧客を相手に既存商品を売っているのですから、営業組織の中では最も標準化がしやすい筈ですが、実際には、顧客情報などが共有化されていることは少なく、顧客データベースらしきものも、年賀状の発送先リストと、あとは経理ソフトに入っている各顧客毎の取引データのみと言った状態が、散見されます。
そこで、よくいるタイプの顧客のモデル像を、最大3つ程度に絞って、各々の特徴を明らかにして戴きます。さらに、その各々のモデル顧客(軍事で言うところの仮想敵国です)に対して、商談の進め方など、有効なアプローチ方法を、営業担当者の経験の中から洗い出し、全体で共有化して戴きます。

★顧客モデル毎の営業プロセスの分析と各段階でのミクロ的改善の実施:
顧客モデル毎の有効なアプローチの洗い出しが始まった段階ぐらいで並行して、営業プロセスの分析にも取り掛かって戴きます。
営業プロセスは、「引き合い」、「一次商談」、「提案」、「二次商談」、「見積もり」、「成約」、「納品」、「回収」のような段階毎に、失敗する原因が存在し、これらの段階を全部、顧客の「イエス」によって通り抜けるものと見ることができます。この各々の段階での通過率を過去の案件から統計的に把握し、どの段階に対して、どのような改善をするのが、全体の案件完了率を押し上げる結果になるのかを考えて戴くということになります。
先に有効な営業アプローチの共有化を進めていますので、ミクロ的な改善策の案出もそれほど問題にはならないことでしょう。

ここまでの作業を進め、確実に結果を共有し、積み重ねるだけでも、売上が向上し始めることはよくあります。システム活用もない、超原始的なナレッジマネジメントですが、やればやっただけの結果は出ます。

STEP2 「オーダーテイカー」 業務の標準化とスキル・マップの導入

次に、前のステップの作業を推し進め、「オーダーテイカー」 実務の標準化に進みます。『典型的中小零細企業の営業組織の想定』のページで紹介したように、中途採用の営業担当者は、もともと営業ができるものと認識されていて、研修などを余り受けていず、結果的に我流の営業スタイルがそのままに温存されています。しかし、自社の営業方針と顧客の性向などによって、在るべき解は、ある程度絞り込まれるのが普通です。前のステップで成果が確認されれば、それは翻って、共有化の成果ということですので、中途採用者のプライドや個人主義を乗り越えて、「オーダーテイカー」 業務の標準化を推進することとします。

具体的には、営業プロセスの段階毎に、オーダーテイカーは何をすべきかを、かなり詳細に書き出して戴きます。これは或る種のエラー防止の作業リストのようなものと考えて戴ければ良いでしょう。弊社は単なる企画代行業者に過ぎませんので、学説を詳細に知りませんが、営業業務に関するコンピテンシーのようなものかもしれません。

この作業を進めながら、各々の営業担当者が、実際に作業を確実に各段階でこなしているかを、相互チェックして戴きます。 大抵、結果は全く徹底が為されていないものとなります。それがやる意志の問題であれば、意義を確認しながら、改善を進めていくことになります。それが能力の問題であれば、習熟によって解決が図れるはずです。

その習熟に必要なのが、スキル・マップです。営業のプロセス上、必要なスキルを詳細に書き出し、それを各人に対して当てはめて、できていない項目は研修などの形で潰してゆくことになります。大まかなカテゴリーは…、

●「社会人基本マナー」
●「営業基本知識」
●「自社・自社製品基本知識」
●「顧客情報・業界情報の管理、習得」
と言ったところでしょうか。これらの各々に(あくまでも目安ですが)、20項目程度のスキルが配置され、マッピングされたものが、営業スキル・マップとなるかと考えます。

※新卒の育成を目的としての紹介ですが、スキル・マップの活用についてはこちらをご覧下さい。

これらの項目全部の研修(と言っても、いつも会議室に集まって行なうオフJTと言うことではありません)を徹底して行なうことにより、自社の顧客のニーズに合致した、自社オリジナルの営業スタイルが完成されていきます。その結果、顧客満足度も逓増し、3Rの追及が視野に入ってきます。

STEP3 「オーダーテイカー」 業務のインフラ整備とVASSの導入

スキルマップの策定と徹底を行なうと、スキルの標準化以外に、大きなメリットが幾つか得られます。その一つが、現行業務プロセスの見直し機会の発生です。研修などによっても尚、個人の結果にバラつきが大きな項目や、徹底がなかなか困難な項目には、何かの課題が潜んでいると見るべきでしょう。

例えば、商品パンフレットを見せながらの説明で皆が躓くポイントなどは、パンフレットの内容の変更をした方が得策であることはよくありますし、詳細な情報を提供しなくてはいけない場面などでは、ホームページを活用し、インターネット経由で情報を提供するなどのメカニズムを構築した方が早道です。

このように、スキルマップの活用を通して、顧客データベースの改善や、各種営業ツール・PRツールの改善。さらに、営業トーク(マニュアル)の見直しなどの進展が期待できます。

また営業の負担を軽減するための…

● (郵便・ファクス・メールなどの各種)DMなどの活用や、
● ラウンダーなどのオーダーテイカー機能の分化、
●営業事務員の自社ミニコールセンター化
なども進められることと考えます。

このような作業の推進には、顧客のニーズの把握が欠かせません。顧客が望んでも居ない改善を施し(大体にして、それは既に「改善」と呼べないのですが…)、各種のインフラ整備をしたところで、労多くして、何らの成果も生まない筈です。この段階になってくると、「顧客目線の意識」は、或る程度、組織の中に浸透する筈ですので、並行して、先述の顧客満足策に対する目標設定や効果測定などを、多少厳密に行なう体制を整えます。こうして3Rの追求を意識すればするほど、3Rのうちの二つは実質オーダーゲッター機能の補完をするので、新規案件の拡大が低リスクで行なえることとなります。

また、固定した既存顧客・既存商品の組合わせの場合には、確実に顧客満足を発生させながら、営業プロセスを実現できるよう、先の営業トークマニュアルを一歩進めて、弊社が企画するVASSなどの導入も成果を生むことでしょう。中小零細企業が、営業組織と言う高コストな販売体制を維持しつつ行なうのが営業なのですから、一般論では、差別化のされた付加価値の高い商品やサービスを提供しなくては、利益的に合わない筈です。そして、経営資源に劣る中小零細企業の付加価値作りは、一般的には人によってなされるべきです。
中小零細企業における「人」による差別化のあり方についてはこちらのページをご覧下さい。

その観点から、営業行為を眺めるとき、商談自体から顧客満足を生む仕組み(詰まるところ、話をするだけで嬉しくなる仕組み)の導入は或る種の必然でしょう。VASSはSPINをベースに、付加価値の高い商品やサービスを、比較的未経験な営業担当者でも、顧客満足度高く販売することができる仕組みです。オーダーテイカー機能を担う、先述のようなラウンダーや営業事務員にも無理なく導入できるので、各顧客接点における顧客満足度の向上に貢献するものと思われます。

VASSの詳細はこちらから

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