(2)AIDA、AIDMA、AISASモデルとその視座

消費者の購買行動プロセスを説明するモデルは、古典的な所ではAIDA、さらにその後、AIDMA、そして、インターネットが普及してからAISASに移行したと言われています。AIDA(通常「アイーダ」と発音されているようです。)は、Attention(注意)〜 Interest(関心)〜 Desire(欲求)〜 Action(購買)の流れでした。消費すべき商品やサービスが飽和するようになって、購買者は欲求を抱いてから購買までに時間をかけるようになりました。その間、対象商品やサービスを記憶している必要があるので、AIDMA(通常、「アイドマ」と発音されています。)モデルが登場しました。新たに加わったMは Memory (記憶)とされていますが、本来「記憶されること」と言ったニュアンスの方が適切に思われますので弊社では寧ろ Memorization とするべきであろうと思っています。

インターネットが普及して、購買者は連携し、商品・サービスの情報や評価を共有するようになりました。その結果登場したのがAISAS(通常、「アイサス」と発音されています。)モデルです。このモデルでは、Attention(注意)〜 Interest(関心)〜 Search(検索)〜 Action(購買)〜 Share(情報共有) のプロセスを指しています。

注目すべき点は、先行する二モデルに比べて、AISASでは購買までの行動が1人では完結しないことです。先に存在する購買者の最終ステップのS(Share)が、後続する購買者のS(Search)の対象となるサイクルが生じていると考えられ、販売者の発信情報の意義が非常に小さくなってしまっています。

また、ここで言うS(Search)の「検索」は検索エンジンに拠るものばかりではありません。SNSなどで共有される情報を「検索」することもありますし、それ以前に、ネットを通してつながっている人々に単に相談して情報を得るケースも多々含まれています。ですので、寧ろ「非販売者からの情報収集」とでも定義すべきステップです。

実はネットを介さず、ママ会や女子会、取引相手との雑談など、面談による「非販売者からの情報収集」も膨大に発生していることと思われます。このような面談による情報収集の場は、当然ですが、遥か昔から存在してきました。つまり、インターネットがない時代から、小さなコミュニティでは口コミが或る意味当然で、AISASは小規模市場では十分成立していたのですが、それがネットの時代になって、口コミが高機能化した上に、会ったこともない人間の評価を当てにする人まで大量に発生するようになったと考えられます。その意味では、インターネットの普及も手伝って成立したAISASは、(インターネットそのものの存在に関係なく)「不特定多数の非販売者発の情報に強く依存する購買行動」のモデルと考えるべきであるかもしれません。

これらの購買行動プロセスのモデルは、広告企画の際の重要な論点を提示しているのは間違いありません。どの段階にいるターゲットを意識するかによって、広告の表現も媒体選択も、出稿頻度も調整がされるべきです。購買行動プロセスのモデルにはそのような価値があります。

一方で、「マーケティング・ミクス」の中の「プロモーショナル・ミクス」の方が、“買う気が湧いていない人々に好意の種を植え付ける過程”まで含んでいて、より“長い”プロセスを対象としていて、広告出稿の企画立案の際には使い勝手がよいでしょう。まずは「プロモーショナル・ミクス」で大枠を固め、詳細検討の際に消費行動プロセスのモデルを参照すると言った用い方になるように考えます。