■3. サムシングR 広告のターゲットの広がり

企業組織がコミュニケーションをする対象、つまり、自社の価値や価値観、経営や事業の方針などを伝えるべき相手は、お客だけではありません。弊社では「業務系対人コミュニケーション企画請負業」という事業ドメインを掲げていますが、このコミュニケーションの対象者もお客だけではありません。

ステイクホルダーという言葉があります。日本語では「利害関係者」と訳すことが一般的ですが、この人々の中には企業で働く人々も含まれれば、取引先も含まれますし、間接金融の相手である銀行などの金融機関、直接金融の相手である株主、地域住民など、様々な人々が含まれます。これらの人々が自社と利害が発生する関係にあるのなら、当然ですが、コミュニケーションの必要性が発生します。つまり、これらのステイクホルダーの人々すべてが、広告対象と考えられるのです。

弊社が「サムシングR」と呼ぶ幾つかの経営の分野があります。このRはRelations(リレーションズ)、すなわち「他者との関係」のことです。たとえば、「まだ商品(やサービス)を買う気のない一般大衆との関係」は、ご存知PR(Public Relations / パブリック・リレーションズ)です。就活中の学生は「自己PR」の内容作りに腐心しますが、この「自己PR」は完全に和製英語です。PRは先述の通り、プロモーショナル・ミクスの一部でもあります。

買う可能性のある人々に買うように働きかけるのは、CR(Customer Relations / カスタマー・リレーションズ)です。お客様との関係を管理するシステムの分野でCRM(Customer Relationship Management / シー・アール・エム)という言葉のほうがよく知られています。他にも投資家との関係は、IR(Investor Relations / インベスター・リレーションズ)として有名ですし、従業員との関係でER(Employee Relations / エンプロイイー・リレーションズ)という言葉もあります。また、組合対策などを含む経営分野でLR(Labor Relations / レイバー・リレーションズ)というのもあります。

弊社代表の市川が経営を学んだ米国の大学では、カリキュラムの科目名にこれらのサムシングRが含まれていることがありました。ステイクホルダーの人々との関係性を築くこと。それはとりもなおさず、ステイクホルダーの人々の自社に対する認識や評価をよい方向へ調整することですから、広告の目的もまたそこにあることになります。